ウェイター ケミンの流儀

ウェイターは、レストランやバーなどの外食産業において接客業務を担当する、シェフとはまた異なる性質を持つ専門職である。客が料理を待つ間、その時間が単なる《待ち時間》になるか否かはウェイターの力量に委ねられる。
レストラン【ビストロ ガスパール】(以下【ビスガス】)には、ウェイターを務めるケミンを目的にやってくる客も少なくない。

◆楽しい会話が無ければ楽しい食事にならない

ウェイター本来の給仕のお仕事をこなすのは勿論として、店全体を把握し、和やかな雰囲気になるよう心がけています。
お客様の会話に花を添え、まわりのお客様にも楽しい気持ちが広がるよう、私から話を振ることもあります。
話すのが苦手だったりゆっくりだったりする方もいらっしゃるので、空気を読んでフォローするのがウェイターとしての腕の見せ所だと感じています。

【ビスガス】はレストランだが社交の場としての顔も持つため、料理の注文は必須ではない。

勤め初めた頃は積極的にオーダーを取りにいっていましたが、最近はお客様との会話を重視しています。話の流れの中で料理をご所望のお客様だとわかった段階でメニューをご案内するようにしています。

(2016年12月 【ビスガス】にて)

◆全てのお客様をフラットな状態で接客したい

私がプライベートでも仲良くしている方がお客様として来店されたとき、会話の内容の線引きが難しいなと思っています。
もちろんご来店いただいたことは嬉しいのですが、友人同士の身内ネタで盛り上がってしまうと他のお客様に疎外感を与えてしまいかねません。
ですから「ビスガスでのケミンはドライだ」と感じておられる方がいらっしゃれば、このインタビューを読んでその理由を察して頂けると有り難いです。

ウェイター業のみならず、多方面で活躍しているケミンならではの悩みであろう。
そして彼は、真剣な表情でこう続けた。

私がビスガスで最高のパフォーマンスを発揮できているのは、いつも暖かい存在が近くに居てくれているからです。

(2017年2月 ケミン宅にて)

◆私にとって【ビスガス】は

『原点にして現在』ですかね。多彩な遊び方があるこの世界で、初期から参加させてもらったのがこの店でした。
その後は別の方の催しなどにも数多く参加させ頂き、様々な喜び・挫折・達成感などを経験してきましたが、その期間も私はずっと【ビスガス】に在籍し続けています。
色々なことにチャレンジし、飛躍していくのはとても大切なことです。その一方で、原点を思い出せる場所のことも同じくらい大切に思います。
そして、私は現在も【ビスガス】のスタッフです。ウェイターとしてより高く飛躍し、プロフェッショナルへ至るために精進して参ります。そんな私を、今後も応援して頂けると嬉しく思います。

(撮影・画像編集:ケミン)

【ビスガス】オーナーシェフガスパールは、ウェイターの役割について「ただ注文を受けられてただお話ができるだけの人なら別に必要ないんだよね。それなら僕だけで事足りる」と語っている。
『店全体が楽しい雰囲気になるように自分が主体となって振る舞う』というケミンの姿勢は、スタッフと客との立ち位置が曖昧になりがちなこの業界において、今後さらに重要なものになっていくのかもしれない。

《ウェイター ケミンの流儀》