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少年は主人公に己を重ね、青年になった

「俺はここで死ぬ運命なのかもしれない。だがな、俺の曲を聴いたお前が、お前たちが、このクソみたいな世界を変えてくれるって信じてるぜ!」

 

 これは、とあるファンタジー小説の主人公の最期の言葉である。歴史を歌い、伝説を紡ぎ、世界と戦ったシンガーソングライターの物語。描いた夢は叶わず、望んだ舞台には辿り着かず、大きな成果を残すことは出来なかった男。その背には片時も手放さなかったギター。その隣には彼の寵愛を一身に受けた少女。

 こんなありふれた物語に憧れたのは、平凡なウェディの少年。他と比べて愛に愛されることもなく、他と比べて歌を歌うこともない、ウェディにしてはつまらない少年。

 だが少年は、唯一無二でありたかった。世論に流されず、世間に飲まれず、世界に紛れず、ただ光輝く星のように。その星は少年にとって、件の小説の主人公と同義であった。

 それから時は流れ、青年はミュージシャンを目指して故郷を旅立つことを決意した。

 

「ガス、本当に行くの?」

「あぁ、止めたって無駄だぜ。僕はこんな小さい村に留まるような男じゃないんだ」

「それは昔読んでた小説のセリフでしょ」

「よくわかったな。なんならペネも来るか?」

「村を出る気はないよ。私はあんまり旅とか出来そうにないし」

「そうだな、ペネは戦う力も魔法も使えない。大好きな食事のために箸を持つので精一杯だろ」

「ガスがいつも美味しい料理を作ってくれたから。ほら、もういいから行きなよ。またね」

「兄の旅立ちを惜しむ気持ちがないのかこいつは……」

 

 黒の髪に灰の眼、浅い青の肌をした小柄な体躯。ガスと呼ばれた青年は、リュートとナイフを背負って故郷を旅立った。旅立ちの理由が『男の子にありがちな一時の憧れ』であったと気がつくのは、いつのことになるだろうか。

 

 これは、小説の主人公に憧れた少年の物語である。何も歌わず、何も紡がず、まだ本当の戦いすら知らない少年。夢は描くに至らず、舞台に立つ理由もなく、成果が出るような行いすらしていない青年。

 彼が最期に残す言葉は。