出動!タヤーカ探検隊

 こんにちは! 知る人ぞ知る【ビストロ ガスパール】期待の新星、コンシェルジュのタヤーカです!

 今日は開店前で誰もいない店内をリポートします! 決してひまだからではありませんよ! タヤーカ探検隊、出発です!

 

 このお庭はですねー、リニューアル時に店の常連さんにシェフがお願いして、ていうか丸投げして作ってもらったらしいですよ。その後の管理は私がしているのですが、緑と光が多くて楽しいです。あえて文句をつけるとしたら、畑が空っぽの日が多いことですかね。ここはシェフの管理なので。

 それにしても、この金色のポストはシェフの指定とのことですが、すごいセンスですよね。ぶっちゃけ浮いてます。前にシェフに「ゴールデンやばいっすね!」って言ったら「本当は黄色でよかったんだけどね。ビストロだから」とのお返事でしたが、意味不明です。

 

 それでは店内に入りましょうか。こちらへどうぞ。

 ドアをくぐってすぐ左、微妙にビストロに似合ってないウサちゃん達が鎮座しています。シェフいわく、犬でもウサギでもない不思議な……どこだっけ、どっかの住人らしいですよ。

 そして右側。常にメラゾーマやきそばとマヒャドかき氷を売ってるモーモンバザーがあります。年に何個かは売れるらしいです。やめればいいのに。

 少し進むと、イラーナ先輩の受付兼書斎があります。イラーナ先輩は私に格闘術やコンシェルジュ業を教えてくれた先生で、その縁でこのお店に呼んでくださいました。あのときカジノでイラーナ先輩に出会っていなかったら、今ごろ私はどうなっていたのでしょう……

 店の中心には緑と光のモニュメント。こういうのがシェフの趣味なんでしょうね。他のお店と違って質素な内装のビスガスですが、なんかシェフのこだわりがあるらしいですよ。私は、シェフにセンスがないだけと睨んでおります!

 そして正面奥。店の心臓部にして目玉のライブキッチン。最大5人の料理人が並んで調理できるという、壮大なキッチンです。ここで調理しているシェフ達を見に来るお客さんが、いつもたくさんいらっしゃいますね!

 おお、キッチンからの眺めはバッチリです。店内が一望できて、なるほど店員としてはやりやすい。視界を遮る物もないし。私は料理できないんですけどね!

 赤を基調とした暖かみのある店内。外の緑と相まって、クリスマスみたいな印象を受けますね。一般的にクリスマスは幸せのモチーフでもありますし、これは狙ってのことでしょうか? イメージ戦略ですかね?

 

 お庭に戻ってきましたよー。あ、フロマージュちゃんとポティロンちゃん! シェフがおでかけ中に見つけた魔物で、見所がありそうだからスカウトしたと言っていました。フォンデュ種のフロマージュちゃんと、たんすミミック種でカボチャをかぶってるポティロンちゃん。いつも外をうろうろしてるフロマージュちゃんには会ったことあるお客様も多いかな? ポティロンちゃんは実は店内に……うふふ。

 

 さて、お店全体を探検してきたタヤーカ探検隊ですが、お別れの時間がやってきました。この度は私の暇潰し、じゃなかった、リポートにお付き合いくださりありがとうございました!

 次は【ビストロ ガスパール】開店日にお会いしましょう! 私はいつでもお店の前で皆さんをお待ちしております!

シェフは自慢の店を語る

 ようこそ【ビストロ ガスパール】へ。

 お客さん、今日が初めてのご来店ですか。ありがとうございます。こちらのカウンター席へどうぞ。

 ご注文はお決まりでしょうか。おっとすみません、メニュー表はこちらです。

 

  • 前菜   スマッシュポテト
  • スープ  マジックスープ
  • 魚料理  いやしのムニエル
  • 肉料理  バトルステーキ
  • デザート スタースイーツ

 

 この順番でお楽しみいただくのが『フルコース』です。そんなには食べられない? なるほど。では、まずはお好きな一品をお召し上がりください。形式ばらず、自由にお楽しみいただいて構いませんよ。

 はい、かしこまりました。『いやしのムニエル』ですね。少々お待ちください。

 

 お待ちいただく間に、当店の紹介でもしましょうか。僕が勝手に話すだけなので、興味がなければ聞き流してくださいね。

 料理屋【ビストロ ガスパール】。当店は初め、グレン城下町から程近い雪山にありました。今でこそ珍しくもありませんが、当時はまだレストランは殆どありませんでした。作り置きの料理を購入するのが主流の時代でしてね。

 初めのうち、お客さんは少なかったです。お客さんの目の前で料理を作るなんて美味しさが不安定だし、そんな店が流行る訳がないと言われたこともあります。

 別に儲けたいわけではなかったので、細々と営業を続けていました。そうしていたら、ありがたいことにお客さんの口コミや宣伝のおかげで、少しずつ客数が増えていったんです。店の落ち着いた雰囲気や、僕たちが料理をする姿を気に入っていただけたようです。

 そして開店から一年後に、店舗をここ、ガタラの住宅街に移して営業を続けております。移設前と比べて、ずいぶん豪奢になった店内に驚いたお客さんも多かったですね。

 おかげさまで収益も安定してきたので、最近では支店を出しているんですよ。といってもジュレットの町に二店舗あるだけですが。海鮮を使った料理が自慢の『ラ・メール店』、メニューはどんぶりのみの『がすぱる亭』、どちらも素敵なお店ですよ。機会があったらいらしてください。

 

 さ、おまたせいたしました。『いやしのムニエル』でございます。温かいうちに、どうぞお召し上がりください。

 

 美味しいですか。よかったです。僕も自信をもって最高の出来と言える皿に仕上がりましたからね。美味しいでしょうとも。

 とはいえ実を言うと、僕はそこまで料理が得意なわけではないんです。料理が上手いのは、他のコックたちですね。みんな、調理ギルドに認められた凄腕の料理人たちです。

 店内に何人かウェイトレスがいるでしょう。彼女たちはお客さんを案内して、料理を待っている間にお話するのが仕事です。仕事というか、好きにやっているだけですけどね。

 僕をはじめ、この店の従業員はみな、好きなことをしているだけなんです。営利目的ではないし、辛い思いをして働くなんてつまらないじゃないですか。厳しい環境に身を置くなんて、僕も嫌ですしね。気楽にやらせてもらってます。

 

 一方的に話しすぎてしまいました、すみません。お代はこちらにお願いいたします。

 当店の料理は、食材と調理器具にかかる費用、つまり原価程度の料金を頂いております。最近では赤字が心配になるくらいの破格で料理を出している店もありますが、僕はモノには正しい価値を支払うべきだと考えています。食材にも調理器具にも、それを作って売りに出してくれている方がいます。その苦労を、思いを無下にするような真似はしたくありませんからね。

 

 

 もうこんな時間ですね。本日は閉店でございます。

 ご来店、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。