ガスパ活動記録(しない)

ツイッターに載せきれない長文とかを投稿するよ

調理職人日記 ~やくそう~

 調理職人を支える調理レシピは、ギルドで認可された食材とフライパンを使うことでしか作れない。レシピに則らない料理は、調理職人の料理として認められず、腕を認められることも名声を得ることもない。僕はこの現状に納得がいかないのだ。世界が信じるレシピを、僕が作る新しいレシピで覆してみせる――

 

 

 既存のレシピに手を加えて、さらに美味しい料理を作ることはできる。しかし、調理職人のスキルたる『身体へ影響を及ぼす料理』に昇華することができない、というのがこれまでのレシピ開発の結果である。あらゆる調理食材の組み合わせを試したように思うが、上手く効果が現れなかった。

 最近ではフードペアリングと称して、料理と共に水薬をドリンクとして味わう方法を試したが、これはレシピの改定とは言えないだろう。

 研究の次のステップとして、今度は食材ではない物を料理に組み込んでみることを思いついた。特に試したいのは、料理同様に身体に影響のある食べ物。まず思いついたのは、古来より傷を治すために食されている植物、やくそうだった。

 

 やくそうをまな板に乗せてみる。これどうするんだ。野菜っぽいけど、決して食感は良くないし、そもそも美味しいものでもない。薬効を得るために食すのであって、食事には向いていないのだ。

 薬効といえば、毒を消し去るどくけしそう、麻痺を取り去るまんげつそう、眠りから覚ますめざめの花も似たような植物である。呪文の発達により使われる機会は減っているが、呪文が苦手な者には未だに重宝されているとか。これらの植物――『薬草』を料理に使うとしたら、スパイス的な利用法が妥当だろうか。少なくとも、サラダにして食べたいようなものではない。

 やくそうとどくけしそうはそのまま、まんげつそうの葉、めざめの花の花弁をそれぞれ切りだし、すべて紐でくくってひとまとめにし、ブーケガルニを作る。本来のブーケガルニは数種類のハーブを束ねたもので、スープや煮込み料理のスパイスとして使われる。これは言うならば、冒険者風ブーケガルニだ。

 おおとろの切り身、しゃっきりレタス、びっくりトマトを具材に、ピリからペッパーと冒険者風ブーケガルニで味を整え、仕上げにデリシャスオイルを加えてコトコト煮込む。

 

「あら、今日はまた随分と珍妙なことをしているのですね」

 

 こちらを覗きこんできたのは、コンシェルジュのイラーナさん。僕とイラーナさんとタヤーカちゃん、みんなウェディ。

 

「おー、いつもの『答えは言わないけど失敗を予言するモード』ですか、イラーナさん」

「それはすごく語感が悪いから、他の言い方を考えたほうがいいと思います」

 

『答えは言わないけど失敗を予言するモード』自体は否定しないんだな。ということは今回も効能のある料理にはできていないのだろう。

 

「今回は悪くないと思うんだけどなぁ。やくそうを主体としたブーケガルニ、本当に効果でてない?」

「ええ、全然全く欠片も寸分も治療効果はありません。それどころか、本来のマジックスープとしての効能も失われています」

「そこまで酷いのか。本当、どうしてなんだろうね」

「あなたは一般的な料理の技術を持ち込んでいるにすぎません。調理職人の料理は、そう簡単なものではないのですよ」

 

 イラーナさんはずっとこの調子だ。自分は答えを知っているかのように振る舞うが、ちっとも解決策を教えてくれない。昔から――そう、剣術を教えてくれていた昔からこうだ。僕が気づくまで物事の本質は教えてくれない。おかげさまで修業時代はとても苦労した。彼女に言わせれば、その苦労こそが強くなる秘訣らしいが。

 

「ここのところは料理の勉強をしているようですが、それはまるで見当違い」

「じゃあ何を学ぶべきだと?」

「あなたが自分で至るべき答えなので教えません」

「はいはい、いつも通りね。わかりましたよ」

 

 悪くないアイデアだと思ったけど、冒険者風ブーケガルニ、どうやら失敗のようだ。おやすみなさい。

 

 

調理職人日記 ~やくそうを主体としたブーケガルニの作成~

調理職人日記 ~ガーディアンサラダ~

 調理職人を支える調理レシピは、ギルドで認可された食材とフライパンを使うことでしか作れない。レシピに則らない料理は、調理職人の料理として認められず、腕を認められることも名声を得ることもない。僕はこの現状に納得がいかないのだ。世界が信じるレシピを、僕が作る新しいレシピで覆してみせる――

 

 

 先日は料理と飲み物の相性を軸に考えを進めたわけだが、今日はもっと根本的な発想、既存のレシピに手を加えてみようと思う。エルフの飲み薬をそのままスープの水分にしてみようか。せいすいでもまほうの小びんでもいいけれど。とりあえず買い出しに行こう。

 店の外に出ると、箒を持って落ち葉を端に寄せているタヤーカちゃんがいた。この子は最近雇ったコンシェルジュのウェディの女性で、主に庭にいる。いい笑顔でお客様を迎える担当。

 

「買い出しに行くけど、何かいる?」

「おつかいなら私が行きましょうか」

「いや、新レシピのアイデア探しだから自分で行くよ。方向性が全く浮かばなくてさ」

「なるほどー。あ、じゃあですね、サラダ食べたいです」

「サラダか。うん、今日はサラダについて考える日にしよう」

 

 普段だったら朝でも昼でも賄いに肉料理を要求してくるタヤーカちゃん。ダイエット中なのか、とは聞かないでおいた。

 

 

 さて、調理職人にとってサラダといえば『ガーディアンサラダ』のことだが、これが実に不思議なレシピである。使うのは、魚の切り身、しゃっきりレタス、デリシャスオイル、のみ。サラダのくせにレタスしか野菜がない。切り身が目立っていて、なんだかカルパッチョみたいだ。しかし、レシピがサラダと銘打っている以上、これはれっきとしたサラダなのである。誰がなんと言おうとも。

 この違和感を解消してみよう。野菜が足りないのだ。料理に使う野菜といえば、しゃっきりレタス、まんまるポテト、ジャンボ玉ネギ、びっくりトマトだ。このへんをガーディアンサラダにありったけ加えてみるか?

 特に良いアイデアも浮かばず、バザーで野菜と雑貨品をいくつか購入して店に帰った。

 

 

 新レシピの研究とはいえタヤーカちゃんに食べさせるものだし、適当でいいか。ガーディアンサラダのレシピにいろんな野菜を加えて……

 

「おまたせ、タヤーカちゃん。『4種野菜のガーディアンサラダ』です」

「ほほーう、見た目の華やかさはいつものガーディアンサラダを優に越えていますね。いただきます」

 

「いいですねこれ! 野菜の種類が豊富な分、色々な味と食感が楽しめて、美味しいしボリューム的にも満足です……が、それだけですね」

「やっぱりそうか……」

 

 ギルド発行のレシピとそれ以外の料理との違いは、食後に身体に及ぼす一時的な効能の有無である。バトルステーキを食べれば筋力が増し、スタースイーツを食べれば魅力が増す。レシピに手を加えて、より美味しい料理を作ること自体はさほど難しくないのだが、調理職人の料理として成功と言えるのは、身体への影響を与えられてこそなのだ。その点において、僕はまだレシピの改訂に成功したことがない。

 

「すごく美味しいですが、体感としては普段のガーディアンサラダほどの効能は感じませんね。頑強さを求めるなら、いつも通りのレシピのほうが圧倒的に効果があります」

 

 レシピに手を加えると効能が弱まるのは当たり前、下手をすれば効能がなくなることもある。理由はわからない。

 タヤーカちゃんがこんなに料理のことを理解している理由も、よくわからない。

 

「ま、私としては別に効能を求めているわけじゃないですし、とっても満足なんですけどね。今日もごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

 

 世界が信じるレシピを覆すような料理の研究は、依然として難航していた。

 

 

 

 調理職人日記 ~4種野菜のガーディアンサラダ(失敗)~

調理職人日記 ~エルフの飲み薬~

「いらっしゃい」

「お邪魔します」

 

 本日のお客さんは、魔法使いにして魔法研究家、赤と黒を基調とした現代風のローブを着込み、かわいらしくも理知的な表情を浮かべるエルフの女性。はっきり言って好みのタイプだ。好みだから店に招いたと言っても過言ではない。

 

「お招きありがとうございます」

「はい。とりあえず、カウンター席へどうぞ」

 

 魔法を研究している彼女の最近の関心事は『エルフの飲み薬』であるという。水差しの中身を飲み干せば、たちどころに身体中に魔力がみなぎるという水薬。製法はエルフの上位者しか知り得ないとのことで、世に出回る数は多くはない。その効能の高さと貴重性から、市場では高値で取り引きされている。

 彼女の研究テーマは『エルフの飲み薬の大量生産』。冒険者による魔物の討伐が常態化している現在、魔力回復アイテムの存在価値は大きい。にも関わらず、同系統最高レベルたるエルフの飲み薬が入手困難であるのには理由があると思われる。素材の稀少さ、製作にかかる時間、作り手の不足、そんなところだろうか。その薬品を、製法も知らない個人が大量生産したいと言っている。馬鹿げている。馬鹿げているが、応援するのは面白そうだと感じた。そして、こちらとしてもエルフの飲み薬が大量生産されることで得る旨みがある。

 

「今日は貴女のために、特別なモノを仕入れてきました」

「あら、なんでしょう」

 

 研究者たる彼女への精一杯の応援として、まだ飲んだことがないというエルフの飲み薬を飲ませることから始めた。味を知り、効能を体感するのは研究の足しになるだろうか。僕自身の研究のためにも、味の感想など聞いてみたい。そして何より、美味しく味わってもらいたい。

 調理技術への科学の応用を研究する『分子ガストロノミー』という学問に『フードペアリング』という概念がある。ざっくり言うと、食べ物と飲み物の組み合わせによって双方の美味しさが増すようなペアのことだ。肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワインを合わせるというアレだ。

 僕がエルフの飲み薬を試飲した際に感じたのは、土と花の香り、酸味、それと後を引く甘味である。なるほど、これに合わせられる料理といえば――――

 

「どうぞ、バトルステーキとエルフの飲み薬です」

 

 総合的に言って、エルフの飲み薬は赤ワインのようだと僕は感じた。森に暮らすエルフ属らしい、芳醇な自然の息吹を閉じこめた水薬。恐らく、自然の力を借りた魔術が製法に絡んでいるだろう。土の香りはどっしりとしたコクがあり、果実のような甘味は赤ワインのそれより遥かに高貴だ。安易ではあるがよくあるペアリングとして、バトルステーキに赤ワインに似ているエルフの飲み薬を合わせた。

 

「これ、すごく美味しいです。意外と甘いのですね!」

 

 

 彼女は興奮した様子で僕に礼を言い、自身の研究所に帰っていった。大量生産、ばっちり研究してくれよな。

 

 僕も少し前から研究していることがある。調理職人を支える調理レシピは、ギルドで認可された食材、フライパンでしか作ることができない。それ以外はまともな料理として認められず、腕を認められることも名声を得ることもない。しかしギルドはここ数年、新たなレシピを発表することもなく、改善も行っていない。それどころか一皿に費やす食材を減らしておいて「これが一人前だ」と言いきる始末である。

 僕はこの現状を変えたい。世界が信じるレシピを、世界が知らないレシピで覆したい。超えるべきは調理職人の総本山。ならば、食材以外の食料をレシピに組み込む試みなど、序の口もいいところだ。まずはここから考えてみよう。

 

 

調理職人日記 ~エルフの飲み薬を用いたフードペアリングの可能性~

出動!タヤーカ探検隊

 こんにちは! 知る人ぞ知る【ビストロ ガスパール】期待の新星、コンシェルジュのタヤーカです!

 今日は開店前で誰もいない店内をリポートします! 決してひまだからではありませんよ! タヤーカ探検隊、出発です!

 

 このお庭はですねー、リニューアル時に店の常連さんにシェフがお願いして、ていうか丸投げして作ってもらったらしいですよ。その後の管理は私がしているのですが、緑と光が多くて楽しいです。あえて文句をつけるとしたら、畑が空っぽの日が多いことですかね。ここはシェフの管理なので。

 それにしても、この金色のポストはシェフの指定とのことですが、すごいセンスですよね。ぶっちゃけ浮いてます。前にシェフに「ゴールデンやばいっすね!」って言ったら「本当は黄色でよかったんだけどね。ビストロだから」とのお返事でしたが、意味不明です。

 

 それでは店内に入りましょうか。こちらへどうぞ。

 ドアをくぐってすぐ左、微妙にビストロに似合わないうさちゃん達が鎮座しています。シェフいわく、犬でもうさぎでもない不思議な……どこだっけ、どっかの住人らしいですよ。

 そして右側。常にメラゾーマやきそばとマヒャドかき氷を売ってるモーモンバザーがあります。年に何個か売れるらしいです。やめればいいのに。

 少し進むと、イラーナ先輩の受付兼書斎があります。イラーナ先輩は私に格闘術やコンシェルジュ業を教えてくれた先生で、その縁でこのお店に呼んでくださいました。あのときカジノでイラーナ先輩に出会っていなかったら、今ごろ私はどうなっていたのでしょう……

 店の中心には緑と光のモニュメント。こういうのがシェフの趣味なんでしょうね。他のお店と違って質素な内装のビスガスですが、なんかシェフのこだわりがあるらしいですよ。私は、シェフにセンスがないだけと睨んでおります!

 そして正面奥。店の心臓部にして目玉のライブキッチン。最大5人の料理人が並んで調理できるという、壮大なキッチンです。ここで調理しているシェフ達を見に来るお客さんが、いつもたくさんいらっしゃいますね!

 おお、キッチンからの眺めはバッチリです。店内が一望できて、なるほど店員としてはやりやすい。視界を遮る物もないし。私は料理できないんですけどね!

 赤を基調とした暖かみのある店内。外の緑と相まって、クリスマスみたいな印象を受けますね。一般的にクリスマスは幸せのモチーフでもありますし、これは狙ってのことでしょうか? イメージ戦略ですかね?

 

 お庭に戻ってきましたよー。あ、フロマージュちゃんとポティロンちゃん! シェフがおでかけ中に見つけた魔物で、見所がありそうだからスカウトしたと言っていました。フォンデュ種のフロマージュちゃんと、たんすミミック種でカボチャをかぶってるポティロンちゃん。いつも外をうろうろしてるフロマージュちゃんには会ったことあるお客様も多いかな? ポティロンちゃんは実は店内に……うふふ。

 

 さて、お店全体を探検してきたタヤーカ探検隊ですが、お別れの時間がやってきました。この度は私の暇潰し、じゃなかった、リポートにお付き合いくださりありがとうございました!

 次は【ビストロ ガスパール】開店日にお会いしましょう! 私はいつでもお店の前で皆さんをお待ちしております!

シェフは自慢の店を語る

 ようこそ【ビストロ ガスパール】へ。お客さん、今日が初めてのご来店ですか。ありがとうございます。ささ、こちらのカウンター席へどうぞ。

 ご注文はお決まりでしょうか。おっとすみません、メニュー表はこちらです。

 

  • 前菜   スマッシュポテト
  • スープ  マジックスープ
  • 魚料理  いやしのムニエル
  • 肉料理  バトルステーキ
  • デザート スタースイーツ

 

 この順番でお楽しみいただくのが『フルコース』です。そんなには食べられない。なるほど。では、まずはお好きな一品をお召し上がりください。形式ばらず、自由にお楽しみいただいて構いませんよ。

 はい、かしこまりました。いやしのムニエルですね。少々お待ちください。

 

 お待ちいただく間に、当店の紹介でもしましょうか。僕が勝手に話すだけなので、興味がなければ聞き流してくださいね。

 料理屋【ビストロ ガスパール】。当店ははじめ、グレン城下町から程近い雪山にありました。今でこそいくつかありますが、当時はまだ、レストランという概念がほぼありませんでした。

 作り置きの料理をバザーなどで購入するのが主流の時代でしてね。初めのうち、お客さんは少なかったです。お客さんの目の前で料理を作るなんて美味しさが不安定だし、そんな店が流行る訳がないと言われたこともあります。

 別に儲けたいわけではなかったので、細々と営業を続けていました。そうしたらですね、ありがたいことにお客さん同士の口コミや宣伝のおかげで、少しずつお客さんが増えていったんですよ。ビストロの落ち着いた雰囲気や、僕たちが料理をする姿を気に入っていただけたようです。

 そして開店から一年後、店舗をここ、ガタラの住宅街に移して営業を続けております。移設前と比べて、ずいぶん豪奢になった店内に驚いたお客さんも多かったですね。

 おかげさまで収益も安定してきたので、最近では世界のあちこちに支店を出しているんですよ。といってもジュレットの町に二店舗あるだけですが。海鮮を使った料理が自慢の『ラ・メール店』、メニューはどんぶりのみの『がすぱる亭』、どちらも素敵なお店ですよ。機会があったらいらしてください。

 

 さ、おまたせいたしました。いやしのムニエルでございます。温かいうちに、どうぞお召し上がりください。

 今まで食べたことがないくらい美味しい、ですか。ありがとうございます。僕も自信をもって最高の出来と言える一品に仕上がりましたからね。美味しいでしょうとも。

 実を言うと、僕はそこまで料理が得意なわけではないんですよね。下手くそって程ではないので多目に見ていただけると助かります。料理が上手いのは、他のシェフたちですね。特に……そっちにいるウェディの彼。彼は小さいながらも自分の店を持っているほどの実力で、安定した腕を持っています。他の二人も非常に優秀で、開店初期から力を貸してもらっています。

 入口に何人かウェイトレスがいたでしょう。彼女たちはお客さんを案内して、料理を待っている間にお話するのが仕事です。仕事というか、好きにやっているだけですけどね。

 僕を初め、この店の従業員はみな、好きなことをしているだけなんです。営利目的ではないし、ましてや有名になりたいわけでもない。辛い思いをして働くなんて、つまらないじゃないですか。厳しい環境に身を置くなんて、僕も嫌ですしね。気楽にやらせてもらってます。

 

 おっと、一方的に話しすぎてしまいましたかね。すみません。お代はこちらにお願いいたします。

 

 ははは、そんなに驚くほど安いですかね。言ったでしょう、営利目的ではないと。最低限の原価程度をいただければ十分ですよ。

 最近では赤字が心配になるくらいの価格で料理を出している店もありますが、うちは他で収入が沢山あるわけでもないので、この価格でお願いしています。

 安くて美味い料理といえば、日曜日の昼間にラッカランを訪ねてごらんなさい。僕の友人でもあるウェディの男性がレストランをやっていますよ。ただし混雑するので、早めに行くことをオススメします。

 お昼に行くのが難しければ、そうですね、夜のオルフェアに行くのがいいでしょう。最近できたばかりのレストランですが、腕の確かな女性シェフがあなたを待っていますよ。店舗自体も豪華で、きっと素敵な時間を過ごせます。

 

 もうこんな時間ですね。本日は閉店でございます。

 ご来店、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。

七里 睦月 ロングインタビュー

先日、10枚目のシングルとなる『かくれんぼ』をリリースした七里 睦月。

当誌の先月号で行った《来年バズるアーティストランキング》のトップを飾った彼に、新曲や今後の展望についてお話を伺った。

 

 

 

――それでは始めに、簡単な自己紹介をお願いいたします。

 

「七里 睦月、30歳。シンガーソングライターです。」

 

――七里さん、ついに30歳を迎えましたか(笑)

 

「それ、みんな驚くんですよね。顔が比較的若く見えるのもあると思うんですけど、中身が年齢に伴ってないって意味じゃないかとヒヤヒヤしてます(笑)」

 

――そんなことはないです。むしろデビューした頃からずいぶん成長なされたなぁ、と。

 

「(記者)さんはデビュー当時から俺を追ってくれてますもんね。本当にありがとうございます。お金のない時期に何度もご飯を食べさせてもらったご恩は一生忘れません」

 

――今こうやって活躍されてるのを見ると、あのご飯は無駄じゃなかったんだな、七里さんの血肉になったんだな、と嬉しく思います。

 

「今ってギターやベースやドラムが集まった、いわゆる『バンド』が流行ってるじゃないですか。でも俺はギター1本と自分の喉しかもってないわけで、やっぱり風当たりは強かったんです。いや、デビューして1年くらいは風すら当たらなかったのかな。

そんな中でも応援してくれた皆さん、特に俺に期待してくれた先輩方や業界の方に応えたい一心で頑張ってきたところはあります。近々、お返しに美味しいものをご馳走しますね(笑)」

 

 

本当は20分に及ぶ大作だった

 

――神話や民間伝承を現代社会に絡めた歌詞が特徴の七里さんですが、今回の『かくれんぼ』からはそれが感じられませんね。

 

「実は先日とんでもない夢を見まして、夢なのに死ぬかと思いました。その時に作った曲が『かくれんぼ』なんです。」

 

――突っ込みどころが多すぎて、なにから聞けばいいのか。では、その「とんでもない夢」について教えてください。

 

「タイトル通り、夢の中でかくれんぼをしました。まあ、夢は夢なので内容まで詳しく話すつもりはありませんが、そういうきっかけがあったんだなくらいに理解しておいてください(笑)」

 

――先ほど「その時に作った曲」とおっしゃっていましたが、文字通り、夢の中で作ったということでしょうか?

 

「その通りです。俺と、もう1人のボーカルがいて、2人で歌うために作曲しました。本当は20分に及ぶ大作だったんですけど、夢から醒めてからそれを楽譜に書き起こし、再構成して今の形になりました。」

 

――20分!?

 

「20分間、歌いっぱなし弾きっぱなしです。夢の中とはいえ流石にあれは大変だった(笑)」

 

――その20分のオリジナル版を聞ける機会は来るのでしょうか?

 

「えー!大変なんですってば(笑) 何にせよ、もう1人のボーカルもいないと歌う気はありませんしね。あれはその人と一緒に歌うための曲なので。」

 

――夢での出来事をとても大切になさっているんですね。『かくれんぼ』でも「想いまで隠せはしない 思い出も忘れはしない」と歌っている通り、忘れられない記憶なのだと。

 

「あの夢もある意味では神話的というか、ファンタジー色が強かったので記憶に残りやすかったのかもしれないですね。たぶんあの夢の全てを覚えているし。いい思い出です。」

 

 

現代社会ってフィクションで溢れてる

 

――そもそも「神話を歌う」というスタイルはどうやって生まれたのでしょうか?

 

「もともと神話が好きだったから、それを自分の創作に組み込みたいなー、と。あとはですね、なんて言うか現代社会ってフィクションで溢れてると思うんですよね。小説とか映画みたいな作品ってだけじゃなくて、SNSとかインターネットって100%のノンフィクションではない。フィクションに求められるのは幻想というか、こうだったらいいなっていう願望が反映されていて、はるか昔から存在する『フィクションの走り』とも言えるものが神話なんですよね。それって娯楽もすくなかった時代における、人間の根元的な欲望だと思う。きっといつの時代にも求められているものなんじゃないか、って思ったのが俺の作詞に影響しています。」

 

――うーん、確かに。フィクションに内包された願望というのはありますよね。七里さんの曲はそれを目の当たりにさせられるから魅力的だし、惹かれるんです。

 

「ありがとうございます。今回は毛色が違う曲だけど、そういうところ――本音を隠すこととか、諦めてしまいがちな願望が自分のなかにあるってことを見つめ直す曲になっていると思います。」

 

 

 

彼のルーツに迫ることもでき、大変貴重なインタビューとなった今回。

最後にぽつりと「今年こそ日本武道館を狙います」と呟いていた。

七里 睦月が世間に広く知られる日も近いのかもしれない。

 

 

『かくれんぼ』

作詞・作曲・歌 七里 睦月

 

1.かくれんぼ

2.ランタンを灯せば

3.I do

4.霧の向こう側

雑TRPG『猫魔族の領分』後日談

閃光が消えたのち、ミューズ海岸の地形はがらっと変わっていた。

地面に横たわっているてっかまき、マーガリン、マロン、エンビレオ、ハル。そしてキャット・シー。

 

エンビレオの足元には、ぼろぼろになったウロコの盾が落ちていた……


てっかまき

「う……うう……」


マロン

「……ん…んんっ…ウロコは………?」


ハル

「 あ、うう…ウロコさん…?」


マーガリン

「…ウ、ウロコさん……?」


エンビレオ

「……」
(横たわったままで、傷の入った盾をじっと見つめている…)


てっかまき

「その盾は……」


ハル

「エンビレオさん、それって…」


マーガリン

「そんな…まさか……!」


マロン

「……ウソだろ…?」


エンビレオ

「……多分、パラディンさんの。……ウロコの、盾」


シー

「彼が守ってくれたというのか…」


マロン

「おれの聖女の守り…効かなかったっていうのか…?!なぁ、おい、ウソだよな…どこかに居るんだよな?!なぁ!!!」


シー

「あれだけのエネルギー量だ…全員のダメージを肩代わりしたのであれば、いくつ命があっても足りないだろう」

 

てっかまき

(苦々しい顔をして拳を握りしめる)


マーガリン

「そんな…そんなことって……」


ハル

「姿形もないなんて」

 

エンビレオ

「……」
(屈んで、盾の落ちていた辺りの砂浜を当てなく掘り返す)


マロン

「くそ……!また守れなかった……!!なんで…なんでだよ……!!!」


エンビレオ

「……。後は頼んだ、って。聞こえないふり、したけど……ウロコは、そう言ってた。……何が起きるか……分かってたんだと、思う」


マロン

「……ありがとな…ウロコ……おれ達を……護ってくれて……」


マーガリン

「ウロコさん……分かってて私たちを……ありがとう…ごめんね……」


てっかまき

(……何も言わずに大剣を納めた)


エンビレオ

「……そうだ、猫島……どうなったんだろう」


マロン

「そうだ……あいつ…猫島に渡った奴は…?」

 

シー

「その件なのだが…ついさっき、私のなかから猫島の“所有権”がなくなるのを感じた。どうやら先に島へ行ったヤツが島を乗っ取ったようだ」


ハル

「乗っ取ったとは、どういうこと?」


マロン

「それって大丈夫…でもねぇよな……」


シー

「あの島は猫の楽園というだけではない。島の中枢、つまり巨猫の巣の玉座には島全体の構造をも変える力がある。その権限を奪われたということは、あの者は私より遥かに強力ということだ…」

 

マロン

「あいつは…一体何者なんだよ…」


てっかまき

「ビストロガスパール。かつてグレンにあったレストランよ。数ヶ月前、そこの主人だったシェフ・ガスパールが魔物に殺され、なりすまされるという事件があったわ。マーガリンと私を含む6人の冒険者でその事件は解決した。そのときに主人だった本当のガスパールの遺体も全員で確認してる。それがなぜ今になって……」

 

マロン

「なりすまし…か…。ってことは、あの猫島を乗っ取ったやつも…偽物の可能性が…?」


シー

「不明点が多すぎる。一度町に戻り、体制を立て直すとしよう。町長亡き今、ジュレットは私が治めるとしよう。なんとかみなの理解を得て、だがな」


マロン

「おれ達も、説得には協力するよ。お前なら頼りになりそうだからな…」


てっかまき

「そうね。新しい体制を築くのにぜひ協力させてほしいわ。ガスパールを逃したのは私達にも責任がある」


エンビレオ

「……難しい、とは思うけど……まずは今までの事、町の人に話して……それから、かな」


ハル

「出来ることならなんでも協力するよ」


マーガリン

「本物のガスパールさんは殺されてしまっているはず…なりすましの偽物かなぜか生き返ったのかな…理由は分からないけどとりあえず私もシーさんに協力するよ…!私も出来る限りのことはしたいから…!」


エンビレオ

「……一足先に……町、戻ってる。いきなり君が行ったら……町の人、また……勘違いするかもしれない。それに……ウロコの家に、盾、戻してあげたい」

 

 

【ジュレットの町:早朝】

意外にも住民たちは聡明で、冷静であった。
すべてを知ると、シーが町を治めることを快く受けいれた。

 

それからの冒険者たちは……

 

 

エンビレオ
町に逗留して、守れなかった約束を果たすために、シーの手伝いをしている。時々ウロコの家を掃除しに行ったりもする。いつか家の主が戻る事を待っているようでもあり、主が戻らなくなった日の姿を保とうとしているようでもある。

 

マロン

もうジュレットには居ない。旅する医者だからね。次の街に向かっている最中かな。ジュレットに滞在中は、怪我した人や病気に罹った人の治療をしている。

 

 てっかまき

ウロコの弔いのために屋敷へと赴いた。そこでサヤマと再開し、驚愕することになる。その後は町に滞在しながらシーに協力し、海岸の再整備を手伝ったり警備をしたりした。猫島へ渡ったガスパールを追う機会を逃さないため、その後もジュレットを拠点に活動している。

 

ハル

この街にいるのはつらすぎるので傷が治ったところでジュレットは離れた。疲れたのでしばしプクレット村でひっそりとくらして、また旅にでる。強くなりたいと修行の旅に。

 

マーガリン

エンビレオさんとてっかまきさんと一緒にシーさんの手伝いと出来る限りのことをして、共にウロコさんの屋敷へ赴きサヤマさんの執事と知って衝撃を受け悲しく再開する…その後ウロコさんの墓前で手を合わせて祈る…「ウロコさん…守ってくれて本当にありがとう…ウロコさんが守ってくれた命、大切にするから見守っててね…」そう祈ってからウロコさんの為にもと強く思い、ガスパールさんの足取りを追うために色々調べながら冒険を再開する。

 

 

町長を中心とした事件から、1週間が経った。

シーは「ビストロ ガスパール」の調査を行い、店内には何故か屍がなくなっていたと報告した。

 

シーは現場からある仮説を立てた。

曰く、店内で燃やした《ドリーム》の灰がガスパールの屍に影響を及ぼしたのではないか、と。

 

町を、そして猫たちを救った冒険者たちは間違いなく英雄だ。
仲間の死や町長の裏切りは決して忘れられないだろう。
しかし、沢山の命を守ったことを誇りに思ってほしい。


今日もまた、静かに夜がふけていく……

 

【Happy End】

 

 

 

 

 

 

【猫島】

 

「てっかまきさんとマーガリンさん。思ったより早く会えたなぁ」

 

「『さっさと殺してしまえば良いものを』」

 

「大丈夫、おそらく彼らは僕を追ってここに来る」

 

 

「『さぁ…君たちに絶望を与えよう!』」