スタッフインタビュー なおたん

ライブクッキングイベント【ビストロ ガスパール】(以下ビスガス)のスタッフは、基本的に主催のガスパールが声をかけて集めてきた。その理由としては(皆さんから参加を希望されたことがほぼ無いからというのはあるが)、何より『ビスガス』のイメージを完璧に持っているのが主催自身おらず、全てにおいて取捨選択を判断できるのが自分しかいないためである。

ウェイトレスのなおたんも、ガスパールから話を持ちかけたうちの1人である。こんなに取っ付きにくい店に、こんなに取っ付きやすい人が誘われた理由とは。

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──なおたんが『ビスガス』を知ったきっかけって覚えてる?

なおたん 覚えてますよー☆ 当時の私はプレイベ自体あまり参加したことがなかったのですが、『リンドロ』(注1)のキャストを始めたのをきっかけに他のプレイベにも行こうと思って、そのときに先輩キャストさんが行ってたから私も行ってみようと思ったのがきっかけですね☆

注1:プレイヤーイベント『GirlsBar RinDrop.』の略称。以前から主催ののりさんとはガスパールも関わりがあった。

──初めての『ビスガス』はどんな印象だった?

なおたん 当時から雑談イベントにはよく行っていましたが、料理の販売を兼ねているのは『ビスガス』しか見当たらなかったので斬新で! 料理を頼んでいないお客さんでもわいわいしていて楽しかったのを覚えています☆

──なおたんと知り合ってしばらくは店員と客の関係だったわけだけど、突然ウェイトレスとして誘われて驚かなかった?(笑)

なおたん 私がキャストをしているイベントとは違う面白さがある所だなぁと通っているときから思っていたので、私も「スタッフとしてお手伝いしたり一緒に盛り上げれたら良いな」って思ってました♪ だからお誘い頂いた時は「是非!」って感じでしたね☆

──そうだったんだ! それは初めて聞いたから嬉しいな。

なおたん ただ『リンドロ』のキャストもなりたてだったからそっちが疎かにならないかとか、掛け持ちしても大丈夫かは心配でしたね……。でも、のりさんに相談してもぜんぜん反対されなかったので、喜んで受けさせて頂きました☆

──たしかに両イベントはだいぶ趣が異なると思うんだけど、『ビスガス』との客層の違いや、なおたんが接客で意識していることはある?

なおたん 『リンドロ』では私を含めキャストのみんなとお話ししたくて来るお客さんが多いですが、『ビスガス』では特定の誰かとお話ししたいってよりも「フラッとやって来ました☆」って人が多い印象ですね。何より1人で来る方が多いので、まずは私から話しかけてみて、その方は他人が話しているのをボーっと聞きたい方なのか、適度に話しかけたら良いのかを見極めようとしています☆ そして、こんな雰囲気の店だったまた来たいなって思ってもらえるような、《気持ちのお土産》を持って帰ってほしいなって思ってます☆

──今のお話や普段の姿を見ていると、なおたんは人前に立つ者としての意識というか「相手のために」という目線が他の人より秀でているように感じるんだよね。押しつけがましくなく、自分自身のエゴでもない。ただ心から如何にして相手に気持ちよく過ごしてもらえるかを考えているような。

なおたん みんなの笑顔が見たくて自己犠牲で色々やっちゃう性格だからですかね(笑) だってせっかくその人が時間を取ってくれてて、ましてやゲームの中なのに、嫌な気持ちになったりつまらないなぁって思わせちゃったりしたらもったいないじゃないですか☆

──そう言われてみれば当たり前のことみたいに思えるけど、それがなかなか自然には出来ないから、僕にはすごいことに見えてるし、助かってます。

──さて、なおたんももう『ビスガス』3年目ですが、今後この店でやってみたいことやこの際だから提案したいことはありますか?

なおたん 『出張ビスガス』(注2)の依頼がなかなか来ないので、私からお茶会やピクニックやお誕生日会を提案したいなぁって思ってます☆ 『ビスガス』って一度来てもらえたら面白さが伝わると思うんですけど、不定期開催だから知ってもらったりリピーターになってもらうのが難しいので、機会を増やしてもっとたくさんの人にビスガスを知ってもらいたいかなー☆

注2:他の方のプレイべや個人的な催しにレストランごと派遣する、という『ビスガス』の試み。依頼お待ちしてます。

──知られるための努力は確かに必要だと、最近は特に感じるね。露出の機会は増やしていきたいと思います。不定期すぎる開店日については、悪いと思ってるけどこのままでいかせてください(笑)

なおたん あとは個人的にですが、『ビスガス』のスタッフはキャラが尖ってて面白い人が多いから紹介がてらの同人誌みたいなのを描きたいなって思っています(笑)

──それが実現したらビスガス同人誌は2冊目ってことになるから、本当にこれはあとで話し合おう(笑)

──では最後に、なおたんから何か質問とかある?

なおたん 私をスタッフに誘った理由ってなんですか? 誘ってもらった時は『リンドロ』でも新人バリバリだったし、実はあまり接客経験がないのですが、どういう所を評価して頂いたのかなって☆

──なおたんは、ただ自然体で当たり前のように「お客さんに気持ちの良い時間を過ごしてもらいたい」って考えてるんだと僕は思ってるんだけどさ。正直、知り合った頃はそういう部分に胡散臭さ・わざとらしさを勝手に感じちゃってたけど、話してるうちに「たぶん素でこうなんだろうな」って信じられるようになったんだよね。『ビスガス』って癖が強いスタッフしかいないから、お客さんに好かれるか嫌われるかの差が激しいと常々思っていて。そうすると大体のお客さんに刺さることができるスタッフが必要になってくる、それがなおたんでした。誰にでも優しくていつでも明るいなおたんの姿勢って他人にはなかなか出来ることじゃなくて、良い意味で異常・異能。そういうわけで、なおたんも十分に癖が強いからウェイトレスに誘われたんだよ!

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彼女の場合、決して他人に合わせすぎたり譲りすぎているという訳ではないように僕には見える。自我がきちんと表にあって、その上で他人に不快感を与えていない。本当に、頭の下がる生き方だ。

何やら『ビスガス同人誌ツー』もやる可能性が出てきたので(マジで言ってる?)、今後もなおたんの面白さに助けてもらいながら営業を続けていきたいところです。

ゴリこ、その生き様

『ゴリこモーニング!』

うた:ゴリこ
作詞:ゴリこ、ガスパール
作曲:まだしてない

私の朝は 早いぜ
寝坊は2時間 だけどな☆
外はにぎやか 早くね?
二度寝していい? するけどな★

だりぃだりぃ めんどくっせぇ!
働かざる者 食うべからず!?
体を引きずり えずく歯磨き!
制服まとえば 0秒出勤!!

「おはよう大将ー」
「店で寝泊まりするなバカ!」

𖥧 𖥧 𖧧 . 𖡼.𖤣𖥧 ⠜ . . 𖥧 𖥧 𖧧 . 𖡼.𖤣𖥧

ゴリこ「おい大将、変なやつ来てるぞ」

ガスパ「変なやつ?」

ゴリこ「ラー油〜! ラー油いかがっすかぁ〜!」

ガスパ「お前かよ」

ゴリこ「大将! イキのいいラー油が罠にかかったんだけど買わねえ?」

ガスパ「買わねーよ。仕事サボってなに売ってんだ」

ゴリこ「油売ってる」

ガスパ「上手いこと言うな」

ガスパ「こんにちは。調理担当のガスパールです。そしてこちらが」

ゴリこ「おっす! 得意料理は『お客様は神様だろ』って自分から言ってくる客のモツ煮! サポート担当のゴリこちゃんでーす」

ガスパ「今回のメニューはモツ煮ではなく『バトルパッツァ』です」

ゴリこ「作り方はとっても簡単! まずは野生のアクアパッツァにバトルをしかけろ!」

ガスパアクアパッツァは魚・塩・オイル・水が基本です。今日はそこに玉ネギとトマトを加えただけの簡単レシピでやっていきましょう」

ゴリこ「料理に慣れてる人はメリケンサックを入れてみよう! 味にパンチが出るぞ!」

ガスパ「ちなみに『パッツァ』には『狂う・暴れる』みたいな意味がありますが、ゴリこほど狂わなくて大丈夫です」

ゴリこ(照れ照れ)

ガスパ「ではまずフライパンにデリシャスオイルを引いて熱し、おおとろの切り身を焼いていきます」

ゴリこ「時短のためにメラゾーマを唱えて2秒で終わらせましょう」

ガスパ「その際にフライパンにマホカンタをかけておくことで『ゴリこパッツァ』が出来上がります」

ゴリこ「あぁぁああぁぁ!! あっぢぃぃいぃ!!」

ガスパ「くし切りにしたジャンボ玉ネギとびっくりトマトを加えて、水を入れたらフタをします。あとは煮たら完成だよ」

ゴリこ「ゴリこちゃんパッツァも完成したぜ! 熟年離婚すれすれの夫婦関係より冷める前に召し上がれ! 私に火傷すんなよ?」

ガスパ「それじゃゴリこ、食べてみて!」

ゴリこ「玉ねぎ嫌いだからヤダ」

ガスパ「よけていいから」

ゴリこ「しゃーねーな……あーあのーあれだ、トマトにしっかり火が通っててぐしゃってした食感……スライム齧った時の食感に近いな。魚の切身も……あれだマーマンの肉みてぇな味がする。うん、美味かったぜ!」

ガスパ「本日ご覧いただいたとおり、邪魔が入らなければとっても簡単なレシピです。皆さんも作ってみてくださいね!」

ゴリこ「おっ、終わった? そんならカジノ行くから、再来月の分の給料をレジから前借りしてくぜ〜! じゃあな!」

ガスパ「もうこんなアシスタントはこりごりだ〜!」

𖥧 𖥧 𖧧 . 𖡼.𖤣𖥧 ⠜ . . 𖥧 𖥧 𖧧 . 𖡼.𖤣𖥧

お客様「こんばんはー」

ゴリこ「しゃーせー!何にしやしょう!?」

ガスパ「居酒屋か」

お客様「この店のオススメはなんですか?」

ゴリこ「今日はイキのいい梅水晶がとれてるぜ!」

ガスパ「居酒屋か」

お客様「じゃあそれで」

ゴリこ「喜んでぇー!」

ガスパ「居酒屋かって。つかなんで梅水晶?」

ゴリこ「オススメだから推奨(水晶)した」

ガスパ「ちょっと好き」

𖥧 𖥧 𖧧 . 𖡼.𖤣𖥧 ⠜ . . 𖥧 𖥧 𖧧 . 𖡼.𖤣𖥧

閉店時間になって、お客様はみんなお帰りになったね。
一仕事おえて安心したのか、床で寝ちゃったみたい。
おやすみ、また明日ね。ゴリこちゃん。

2月の活動報告とか

冗談でなく5年ぶりくらいにスタッフの公募をしました。とりあえず募集概要をご覧ください。

募集要項はただ1つ
《自分のことが好きであること》
『我が強い人』を求めています。わがままとかそういう意味ではなく、まわりに流されるだけでない自分の意見を持っている方。大事にするべき人やコトを自分で選べる方。
当店には客数は集まりません。そこに僕らが焦りや不満を覚えないのは、自分で選んだ在り方を表現できているからだと思っています。
常識的で、しかし非常識なヤバさを抱えている方と知り合えることを楽しみにお待ちしています!

ここまで敷居の高いプレイベスタッフの募集ってあんまないんじゃない!?と思いながら書きました(後日気の合う友人にこの話をしたところ「人前に立ってもらうんだからこれくらい普通じゃない?」と言われました。だから君は僕の友達なんだよ)

【ビスガス】という物語は連載9年目を迎えました。予想外を嫌う性格からほぼ全てを僕が管理・決定してきた中で、「選ぶ」だけでなく「選ばれる」ことにも価値を感じるようになりました。折を見て、また募集はかけてみようと思います(応募が無かったということ 笑)

☆★☆★☆

さて、話は変わりますがこちらも久しぶり。
《出張ビスガス》の募集です。

・個人的な催し(誕生日パーティやプレイベなど何でも)
・合同イベントへの参加

そういった場にレストランブースとして参加させていただきます。露店でもいいけど。
企画内容を相談してから実現可能かを判断する形にはなります。つまり、他人に迷惑をかける内容とか、あまりにこちらをずさんに扱うような方の依頼は断る場合があります。どうぞお気軽にご相談ください!

募集は3月中まで。開催はいつでも構いません(ひまなので)

ここまで読むようなガスパ好きのために、今回の募集による出張は[料理代無料]にします(パトロンからの資金提供が百万単位で余っているので)

とりあえず匿名で相談したい場合はこちらにお願いします https://marshmallow-qa.com/vk4dnpp4wsu5x3y?t=7h1hYW&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

ウェイター ケミンの流儀

ウェイターは、レストランやバーなどの外食産業において接客業務を担当する、シェフとはまた異なる性質を持つ専門職である。客が料理を待つ間、その時間が単なる《待ち時間》になるか否かはウェイターの力量に委ねられる。
レストラン【ビストロ ガスパール】(以下【ビスガス】)には、ウェイターを務めるケミンを目的にやってくる客も少なくない。

◆楽しい会話が無ければ楽しい食事にならない

ウェイター本来の給仕のお仕事をこなすのは勿論として、店全体を把握し、和やかな雰囲気になるよう心がけています。
お客様の会話に花を添え、まわりのお客様にも楽しい気持ちが広がるよう、私から話を振ることもあります。
話すのが苦手だったりゆっくりだったりする方もいらっしゃるので、空気を読んでフォローするのがウェイターとしての腕の見せ所だと感じています。

【ビスガス】はレストランだが社交の場としての顔も持つため、料理の注文は必須ではない。

勤め初めた頃は積極的にオーダーを取りにいっていましたが、最近はお客様との会話を重視しています。話の流れの中で料理をご所望のお客様だとわかった段階でメニューをご案内するようにしています。

(2016年12月 【ビスガス】にて)

◆全てのお客様をフラットな状態で接客したい

私がプライベートでも仲良くしている方がお客様として来店されたとき、会話の内容の線引きが難しいなと思っています。
もちろんご来店いただいたことは嬉しいのですが、友人同士の身内ネタで盛り上がってしまうと他のお客様に疎外感を与えてしまいかねません。
ですから「ビスガスでのケミンはドライだ」と感じておられる方がいらっしゃれば、このインタビューを読んでその理由を察して頂けると有り難いです。

ウェイター業のみならず、多方面で活躍しているケミンならではの悩みであろう。
そして彼は、真剣な表情でこう続けた。

私がビスガスで最高のパフォーマンスを発揮できているのは、いつも暖かい存在が近くに居てくれているからです。

(2017年2月 ケミン宅にて)

◆私にとって【ビスガス】は

『原点にして現在』ですかね。多彩な遊び方があるこの世界で、初期から参加させてもらったのがこの店でした。
その後は別の方の催しなどにも数多く参加させ頂き、様々な喜び・挫折・達成感などを経験してきましたが、その期間も私はずっと【ビスガス】に在籍し続けています。
色々なことにチャレンジし、飛躍していくのはとても大切なことです。その一方で、原点を思い出せる場所のことも同じくらい大切に思います。
そして、私は現在も【ビスガス】のスタッフです。ウェイターとしてより高く飛躍し、プロフェッショナルへ至るために精進して参ります。そんな私を、今後も応援して頂けると嬉しく思います。

(撮影・画像編集:ケミン)

【ビスガス】オーナーシェフガスパールは、ウェイターの役割について「ただ注文を受けられてただお話ができるだけの人なら別に必要ないんだよね。それなら僕だけで事足りる」と語っている。
『店全体が楽しい雰囲気になるように自分が主体となって振る舞う』というケミンの姿勢は、スタッフと客との立ち位置が曖昧になりがちなこの業界において、今後さらに重要なものになっていくのかもしれない。

《ウェイター ケミンの流儀》

たくさん書いた

ビジュアル的な制作が苦手である。ファッションもインテリアも、絵も映像も。
出来るのはせいぜい、理屈やら感情やらをわからない気になってぐるぐると自省と反発を繰り返すくらいのもんで。
わかった気になって後ろ指をさされるのが恐いから、予防線として「他人の考えなんかわかんないよ」と嘯いているわけです。

そんなあたりから今回の謎解き制作ではキャラクター(はもともと素晴らしいものがあって)、ハウジング、フライヤーあたりのビジュアル面はぜーんぶアリマさんにお願いしました。
僕がやったのはアリマさん原作のキャラクターたちのことを目茶苦茶考えて、お話の大筋を整えて、遊べるように謎をくっつけること。

二次創作のえげつなさに初めて触れました。上記の通り日頃から「他人の考えなんか〜」と逃げている僕としては、人様のキャラクターを書くなんてとんでもないことです。キャラクター性について具体的な正解は無いのに創造主の中にぼんやりとした正解エリアはあるので、そこに着地するには創造主への理解を深める必要があるからです。

他人と腹を割って話すなんて難しくて、恥ずかしくて、痛いことです。何が好きで何が嫌いで、何を理解できて何を理解できないか。相談という形で自分の考えを、趣味を、悩みを、聞いてもらう。そういう人間関係を久しぶりにちゃんと頑張ったと思います。そうでないと、とても人様のキャラクターなんてお預かりできないから。

結局のところ、最終的にはすっげーーーーーー量の赤ペンを入れてもらいました。だから僕がやったことって本当に少なくて、そしてそれで良かった、良い関係を築けたなと思っています。言いにくいことも言ってもらえる、ちゃんと監修を入れてもらえる、そういう信頼を得られたのだと解釈しています。ありがたいなと思っています。

人生とは(みたいなことを言うのは見る方もきついとは思いますが言います)、自分に足りていない要素を集めていく時間なんじゃないかと、最近は考えています。
人として社会に属していたいのなら、少なからず社会への貢献を果たすべきだから。他人の良さみたいなものを受け取り、活かすほうが共同体としての意味がある。
まず本人は誤解なく受け取ってくれるだろうからあえて言うのだけれど、僕にとって、大きな意味のある時間でした。

みたいな結論にこの僕が、忖度も義理もろくに果たさない僕が、至ったのです。この物語を作ることで……
1時間くらいで遊べるから、ぜひご来店くださいね。

また明日。

そしてこういう恥ずかしいことをわざわざ書くのは、これを面白がる人とまた出会うためなのだ。
砂の山に砂金を求めて。

スタッフインタビュー ナトル

ライブクッキングイベント【ビストロ ガスパール】が、12月12日に開店8周年を迎えた。ウェイトレスのナトルさんは初参加から6年が経ち、主催のガスパールを除けば最古参のスタッフである。今回はそんなナトルさんに、これまでの思い出や参加への想いを語ってもらった。
なお、インタビュアーは主催たるガスパールであるため、ただの仲良し会話であることはご理解ください。

━━ビスガスが開店8周年を迎えました。振り返ってみていかがですか?

ナトル 本当に色々ありましたね。ロールプレイ営業にはじまり、脱出ゲーム回、武者修行、果ては同人誌の発表まで! 同人誌は今でもたまに見返すことがあります。最近はログインすらあまりできていませんが、出勤したときに暖かく迎え入れてくださるのでとても嬉しく思います。
(編集注:武者修行→メギストリスの街の料理屋でライブクッキングを行い、新規客層の開拓を目的としたイベント)

━━普通の開店日よりも特別な日の方が印象深いというのが、なんともビスガスらしいというか(笑)

ナトル この6年、色々なことしすぎなんですって! 閉店したりとか! 企画してるのはオーナーですからね(笑)

━━その中でも一番思い出に残っている回は?

ナトル 色々ありますが……何気に楽しかったのは武者修行かもしれません。呼び込んで、来てもらって、作ってもらって…みたいな。普段あまりやらないことだし、知らないお客様とお話しできるのはとても楽しいことですよね。

━━プレイベという催し自体に関わりの無い人がお客さんになるというのは、界隈からしても特別なことかもね。

━━6年前、参加することになったきっかけは覚えてますか?

ナトル 覚えてますよ。きっかけ自体はオーナーからのお誘いでしたが、その頃、常連だった私としてはとても嬉しかったですよ。「誘ってもらえてる!」って。

━━当時の『ナトル』はロールプレイ的な側面が強かったんだっけ。

ナトル ウェイトレス初期は自分のイメージを損ないたくなくて、ロールプレイの側面が強かったですね。今も大きくは崩したくないですが、少しフランクな方が話しやすいかなと最近思いまして。敬語はなるべく崩さないですけど、少しは話しやすくなったと……思いたいですねぇ。

━━接客に対するナトルちゃんなりの考え方はありますか?

ナトル 一人で話を聞いてるだけ……なんて疎外感をなるべく無くすことですね。好きで一人でいる方なら申し訳ないのですが。

━━お客さんを退屈させないように、ただの待ち時間にならないようにと店舗全体に気を配っている様子は、キッチンからでもよく感じています。

ナトル ありがとうございます!

━━ビスガスのどんなところが好きで参加し続けているのか教えてください。

ナトル まず、とっても緩い経営方針であること。スタッフに参加を強制しない、けど参加したくなるような暖かい雰囲気で運営してもらえるのがとても有難いところですね。それでいてたまに大きな催し物なんかもしてみたりして。色々手探りで、でも楽しくしていきたいっていう気持ちがとてもわかるので、是非協力したいっていう気持ちが強いです。

━━主催の僕が「今日やるぞ!」って急に思い立つことが多いのもあって、スタッフの予定を気にしてられないというのが実情だけど(笑)

ナトル あとはオーナーが私のことを信頼してくれてるってちゃんと感じる所でしょうか。「ナトちゃんが居てくれるなら大丈夫!」って、何となくそう思ってもらえてるのかなと。自惚れかもしれませんがそれがとても嬉しいからですかね。

━━関係が長くて親しみ深いナトちゃんに安心感を覚えているのは確かだよ。いつもありがとう!

━━今後、ビスガスとしてやってみたい企画やアイデアはありますか?

ナトル 『合言葉を伝えると特別に頼めるようになるメニュー』みたいなものがあっても面白いかもしれませんよ。例えば、いつものシェフじゃなくてウェイトレスのゴリこが作ったご飯になる、みたいな。隠しコマンド?(笑)

━━HUNTER×HUNTERの「ステーキ定食、弱火でじっくり」みたいな話かな(笑)

ナトル あぁ!それに近いものですね!(笑)

━━裏メニューは考えたことがなかったから、何か面白い案がないか検討してみるよ!

ナトル 私からも質問を。オーナーが8年もこの店を続けることが出来た原動力ってなんですか?

━━対外的に記事にする文章だから少しかっこつけて話すけど(笑)
まず【ビストロ ガスパール】というのは物語のタイトルです。あるレストランとシェフを中心とした、なんかいろいろ起きてる物語。そこには僕がいて、君たちスタッフやお客さんがいたりいなかったりして、日常や非日常を過ごしている。僕も「いつ完結するのかな?」って本気で思ってるけど、まだ登場人物である君たちが残ってくれてるから締める気にならないんだよね。ありがたいことに、誰かが面白がってくれるから続けられている、そんな感じです。

ナトル すごい素敵なコンセプトじゃないですか! そんな物語に私を加えてもらえてとても光栄に思います。

━━こちらこそ、いつも本当にありがとう!

ナトル 今後ともよろしくお願いいたします!

スタッフインタビューの初回ということで僕の進行に不安があったものの、そこはさすが6年の仲、楽しくお話しできた。
もはやビスガス特別開店のために利用券を買ってくれているナトルさんではあるが、これからもゲーム内外で遊んでくれたら嬉しい。

さて、せっかくなのでインタビューに出てきた『裏メニュー』をこっそり始めてみます。
次回の開店日(12月17日→終了しました)、注文時に「バトルステーキ、弱火でじっくり」とお伝えください。取引の際にちょっとしたプレゼントを差し上げます。こっそりどうぞ!

私たちの日常

 夏の暑さともお別れできかけてきた頃、アリマ研究所のメイドたちはちょっとだけ忙しくなる。季節が夏から秋へと移ろうのに合わせて、アリマ様のお召し物や寝具の衣替え、お客様にお出しする飲み物や調度品なんかを変えていかなければならないからだ。
 特段と急ぐ必要も別にないのだが、メイド長のスズメさんから『気がついたらすぐにやりましょうね』と口を酸っぱくして指導されてきたので、私たち後輩は常に仕事を探してまわるクセがついていた。
 これは、そんな何でもないある日のこと。普通の仕事の日の話です。

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「コバトちゃん、これって夏用かなぁ?」

 同期のチドリが、部屋の壁にかけられたタペストリーを指差しながら私を呼んだ。
 それは恐らく麻糸製で、明るい青や黃、白や橙の縦縞で彩られたシンプルな一枚。色合いも素材感も涼しげで、一目で夏らしさを覚える。
 つまり、チドリは私に『タペストリーも衣替えの対象かな?』と聞いているのか。

「そうだね。取り替えたほうがいいか先輩に聞いてみるよ」
「ありがとー、コバトちゃん!」

 ちょうどリンドウ先輩のところに行く用事があった私は、ついでにこの件も預かることにしたのだった。

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 リンドウ先輩から『何か良さげなのに変えておいて』とざっくりとした指示を受けた私は、同期の誰かに手伝いを頼もうと思いながら歩いていた。

 私は『作品』のうちからひとつを選ぶのが苦手だ。
 以前、仕事でテーブルクロスを選ぶ機会があったのだが、あれもこれも美しくて、どれもこれも可憐で、誰も彼もが力作を世に送り出してくれているんだよね……などと思いを巡らせてしまい、とてもじゃないが一枚だけを手に取ることが出来なかった。何を以て、私の裁量なんかで他人の優劣を決めることが出来ようか。
 さて、幸いにして、スズメさんはこんな教えを私たちに授けてくれている。曰く『個人の得手不得手は仕事では些細なこと。全体として誰かが完遂できればいいのよ』と。

 その言葉の続きがあったんだけど何だったかな、と斜め上を見ながら歩いていたところで、書庫で本棚を眺めているヒヨドリを見つけた。

「ヒヨ、いま忙しい?」
「見ての通り、本棚の整理中だよ〜」

 本の一冊も出さずに両手をひらひらと遊ばせているヒヨドリは、あんまり忙しそうには見えなかった。

「ほんとかなぁ」
「うん、今終わったところだからほんとだったんだよ」

 サボリ癖のあるヒヨドリの言うことだからちょっと怪しい。まあ、いいけどね。

タペストリーを秋っぽいのに変えたいんだけど、選ぶの手伝ってほしいんだ」
「あー、コバトに選ばせると時間かかる上に決まんないもんね。いいよ、行こっか」

 サボリを疑われた意趣返しのつもりだろうか。鼻につく言い方をされても事実なので言い返せない私と、おどけて軽く舌を出したヒヨドリとで笑い合いながら部屋を出た。

🐦🐦

 二人連れ立って廊下を進み、物置きに辿り着いた。この部屋の扉がやけに重いのは、高価とは言わないまでも大切なものが沢山しまってある場所だからなのだろうか。
 中はそれなりに広く、調度品の数々やアリマ様のちょっとした趣味の物が置いてある。きらびやかとまではいかず、どちらかといえば地味なアンティークが好みの主人。

タペストリーはわりと数が多いんだよね」

 ヒヨドリがハンガーラックにかけられた布をさらりと除けると、ハンガーにかけられて並んだタペストリーがざっと二十ほど現れる。
 ここで『全部素敵だよね』などと呟こうものならまたヒヨドリにからかわれるのは目に見えていたので、無言で次々とめくっていく。

 アリマ様が生物学者であるためか、動物がモチーフの作品が多い。かわいらしいものから恐ろしいものまで、イラスト調のものから写実的なものまで。
 さらさらとめくっていく私の横から手が伸びてきて、ヒヨドリが一枚のタペストリーを抜き出す。

「これにしよ。エルトナっぽいし」

 選ばれたのは、森を背景にどっしと佇むカムシカが描かれたものだった。曇り空みたいに厚く重なった枝葉は光をほとんど通さず、角の立派なカムシカを薄暗く照らして幻想的に映している。少し雰囲気が暗い気もするが、秋らしいと言えば秋らしいのかな?

「決めるの早くない? もう少し他の物を見てみても……」
「悩んでたっていつまでも選べないんでしょ。コバトは何のために私を呼んだのかな?」

 それもそうだと思い直し、ここはヒヨドリの判断に委ねることにした(比較した上で決めたかったからやや不本意ではあるけれど)。
 私を安心させるように、彼女はなおも言葉を続ける。

「それに、これが正しい選択かどうかはあの子がジャッジしてくれるわよ」

 ああ、そういえばそんな話があったっけね。私たち四人の新人メイド──コバト、チドリ、ヒヨドリ、そしてヒバリ。
 研究所にある衣装から芸術品までその全てを把握しているらしい、お嬢様育ちのヒバリ。

🐦🐦

 それなりに重量のあるタペストリーだったので、ヒヨドリと二人で横倒しにして部屋まで運んだ。
 ちょうどヒバリが掃除をしていたので、テーブルにタペストリーを広げて問いかける。

「このタペストリーをね、秋っぽいものに替えたいんだけどこれってどうかな」

 ヒバリはこちらに近づいてタペストリーを見て、わずかに思考を巡らしたかと思うと私に告げる。

「秋らしいと言えば、このカムシカのものか紅葉がモチーフのものかの二択になるかしら」

 紅葉の柄なんてあったっけとヒヨドリに目配せすると、さっと目を逸らされた。やっぱり他のは大して見てなかったんじゃない!

「ちなみにヒバリは、カムシカと紅葉だったらどっちがこの部屋に合うと思う?」

 手抜きがバレたことを誤魔化すように、ヒヨドリはヒバリに問う。

「どちらのほうが合うか、ですか。私にはよくわからないけど……」

 頬に手を当てて思案顔のヒバリ。自分で何かを決めるのが少し苦手なことを私は知っていたので、助け船を出す。

「そしたらね、例えばどちらのほうが価値が高いかわかるかな?」
「カムシカのほうが少しだけ、作られた年代が古くて価値があると思います。アンティークとヴィンテージのはざまとでも言いましょうか」

 アンティークとヴィンテージの違いを私はよく知らないけれど、カムシカのタペストリーを選んだのは間違いではなさそうだった。
 ヒバリに礼を言い、得意顔をしているヒヨドリに指示を出してタペストリーを飾る。うん、部屋に暖かみが足されたような気がする。

🐦🐦🐦

 そのまま三人で部屋の掃除を続けていると、どこからかチドリが帰ってきた。なんだかメイド服が薄汚れているけれど、何をしていたのだろう。

「おかえり、チドリ。どこにいたの?」
「そろそろ秋の虫が出てきてるんじゃないかなーって、お庭で探してた!」
「……そっかぁ」

 突拍子もない内容だし微妙にサボりっぽいんだけど、まあここは生物学者の研究所。アリマ様から生物を捕らえてくるよう言われることもあるし、チドリの『気づく力』には助けられることも多いのでこういうときは放っておく。
 なによりチドリは、本当に秋の虫を探したいから探してただけだと思うから。どこかのサボり虫とは違って。

「何か言いたいことがあるのかな、コバト?」

 うっかりヒヨドリと目が合って、にっこりと怪しい笑顔を向けられてしまった。

「なんでもないよ。さ、みんな仕事しよ!」

 みんなに声をかけて仕事に戻る私、コバト。
 そんな私をやれやれと見つめる、ヒヨドリ
 またどこかに行こうとしている、チドリ。
 とっくに掃除を再開している、ヒバリ。

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 スズメさんの教えの続きを思い出した。

『個人の得手不得手は仕事では些細なこと。全体として誰かが完遂できればいいのよ』

『さて、あなたの得手は何かしら?』

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 いつか、もっと経験を積んだら、どんな業務もひとりでこなせるようになる日が来るのだろうか。

 もしそんな立派なメイドになれたとしても、私たち四人はお互いに助け合いながら生きていけたらいいな。

 なんて。

 私は願っている。

《私たちの日常》おわり

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著:ガスパール(@hakki_yoi)
原作・画像作成:アリマ(@DQ10_arima)

謎解きハウジング《スズメの苦悩》
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アリマ×ガスパールによるコラボ
謎解きハウジング『メイドの心得』
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