ガスパ活動記録(しない)

ツイッターに載せきれない長文とかを投稿するよ

母と弟と変わったらしい僕

昨年はいろいろあって、人間として随分と飛躍した年であったと思う。

 

先日、家族と食事をした。独り暮らしの僕にとっては、やや久しぶりの家族との団らんであった。

そこで母から言われた「変わったね」という言葉。なかなか深みがあるように思う。

僕が生まれる前から僕のことを知っている、ともすれば僕自身よりも僕を理解している母の「変わったね」。

今の僕は、母から見て『どの時代の僕』と比べて変わったのだろうか。生まれたて。幼少期。青年期。はてさて。

ちなみにこの食事会は、僕が人生で初めての挫折を迎え、それを乗り越えて落ち着いたころに開かれたもの。後には「そんな笑い方ができるんだね」という言葉がついていた。

 

その場にいた弟が言ったのは「よく笑うようになった」というものだった。

なぁ弟。君が知っている僕は、一体『いつの僕』からだい?

僕よりあとに生まれた君は、僕の成長過程、すわなち僕が変化し続けている最中、そこからしか知らないだろう。

 

母も弟も、僕を過去と比較して出た言葉なのは確かだが、その根本はまるで異なる。

歴史すべてのどこかから比較した母と、自分が知りうる限りの歴史のどこかから比較した弟。全然違うね?

 

さて、未だ発展途上の僕は、毎日が勉強で、毎日が成長だと自認している。

上を目指す限り、成長を願う限り、人は変わり続ける。不変とは停滞である。

変わった先が間違いなこともあるだろう。

しかし成長とは、失敗を重ね、成功を積み上げ、さらに価値を高めていくこと。

 

どうも僕は、過去の成功体験だけで満足できる人間ではないらしい。

僕のすべてを知る家族ですら驚かせるくらい、今後も変わることを恐れずに成長していきたいと思う。

カーリング女子と友人の発言にみる『ヒトのコンテンツ化』

先の平昌五輪において銅メダルを獲得したカーリング女子。喜ばしい結果にも関わらず、祝賀パレードでのスピーチで選手が願ったのは『カーリング選手としての評価』だった。

そだねー』『もぐもぐタイム』など、実績外──スピーチでの表現を用いるならば『選手としてのパフォーマンス』ではない部分──がフューチャーされることが多かったカーリング女子。しかも結果を残しているのに、この扱いである。アイドルではなく一介のアスリートとして、思うところがあったのかもしれない。

 

 

以下は僕の友人の話である。友人は絵を描くことが好きで、SNSに絵をアップすることも多い。その友人は「コンテンツでフォローされてコンテンツだけ褒められてコンテンツに飽きられた時に、使い捨てでポイされてるなって感じることが多々ある」と語った。

 

 

特にそういった方面に詳しいわけでもないので、これといったまとめもない。

ただ、どこかの誰かに言いたいのは、モノ消費からコト消費と言われるようになって久しいが、ヒトとコトを同列に扱いがちな社会はどうなのか、ということ。

絵にしても音楽にしても「作品は好きだけど人柄が好きじゃないから評価しない」という意見もあるというが、似たような問題だろう。

 

まぁ、なにかにつけて根底にある『ヒト』の部分、情緒的な部分を無視できないというのも人間の良さかもしれないが……

2月某日、ビストロにて

※これはちょっと前にツイッターでした話を元に、物語として再構築したものです。口調が多少違うかもしれません。

 

 

 

「……以上、今日はこれで解散」

たった今終わったのは、調理職人の祭典【マルシェ】の会議である。

しかし……前回の好評を受けて第2回の開催を決めたのだが、どうにも僕はやる気が出ない。主催の僕にやる気がないというのは致命的な問題であるが……

 

「どしたよ王さま~」

まだ会議室に残っていたオーガの大男が話しかけてくる。

「なんか暗い顔だな!」

「見てわかるくらいひどい顔してるか?」

「おう、めんどくせーって顔してる」

「大正解」

ガサツそうな見た目とは裏腹に、人のことをよく見ているのがこいつの良いところだ。だから、普段から割と愚痴を言いやすい相手。

「準備が始まったわけだけど、正直、面倒臭い」

「おいおい、頑張ろうぜ! これはあんたにしかプロデュースできない企画だからよ……大丈夫、やりきったらきっと達成感で満たされるからさ!」

そう言って僕の背を力強く叩き、励ましてから去っていく。

気持ちはありがたいが……もはや達成感を求めるほどの元気も出てこないのが現状である。

彼はいつも明るく、まわりを照らすような存在だ。優しく強く、そして面白い。人望に厚いのも頷ける。そうだ、僕の代わりに彼が【マルシェ】の主催をやってくれれば────

 

「どうしたの、君。いつもよりも悪い顔してるけど」

「普段から悪い顔してるみたいに言うな」

こんな遠慮のない鬱屈した心配の仕方をしてくるのは、古い友人のウェディに決まっていた。

 「彼との話が聞こえてたから、理由はわかってるけどさ……勢いで物事に取り組むからそういうことになるんだよ。君の悪い癖だ」

「いいや、これは僕の美点だね。たまたま今は乗り気じゃなくなっただけだ」

「じゃあいつなら乗り気になるんだい? ビストロだって開けてないくせに」

「……うるさい。嫌なものは嫌なんだよ」

そう言ってそっぽを向く僕。

 

やがて彼の溜息が聞こえた。

「なるほど、いつも以上に今の君は強情らしい────ならば仕方ない、約束しよう。見事に【マルシェ】をやりきったら、僕は君の靴を舐める」

「どうしてその結論になった」

振り返ると、彼はやけに真剣な、それでいて苦悩に満ちた顔をしていた。意味はわからないが。

「いや、僕を下に見ていいっていうアドバンテージを贈ることで、少しでも君のやる気に火をつけられたらと……」

「少しも嬉しくないから。というか靴が汚れる」

「汚れるって酷くないか?」

「お前の発想のほうがよっぽど酷い」

こいつは僕をどんな風に思っているのだろう。一度話し合ったほうがいいかもしれない。

「いいから、今日は帰れよ。あんまり話す気分でもないよ」

ぐいぐいと彼を外に押し出し、ドアを閉める。

決して悪い男ではないのだが、おそらく頭がおかしいのだと思う。どうしてその条件で僕を喜ばせられると思ったのだろう。 思いつくにしても他になにかあるだろうに。

 

「ああ、馬鹿馬鹿しい……」

寝室に行くのも面倒で、ビストロのソファに寝転がる。

僕の特技は、どこでもすぐに眠れること。

 

 

 

とんとん、と優しく肩を叩かれて目を覚ました。

「おはよう。起きた?」

「……おはよう」

目を開けて初めて目に写ったのは、目を見張るようなオーガの美女。(目、が多い。寝ぼけている)

即ち……いや、僕らの関係性はどうでもいい。それより気になるのは、この、店内を満たす甘い香り。そして彼女が着ている汚れたエプロン。

「何か作ってたの? ていうか料理できたんだね」

「人並み程度は出来るわよ……うん、朝ごはんでも作ってあげようと思って、ホットケーキを焼いたの。食べましょう」

慣れた手つきでビストロの食器棚を開けて、食事の準備をしてくれる彼女。

「紅茶も淹れたの。ふふ、大丈夫、ティーポットは2人で1つよ」

小馬鹿にしたような微笑みを向けてくる。以前、2人で行ったティールームで僕が『1人でティーポット1つなんて飲みきれないだろ……』と唖然としていたことを揶揄しているのだろう。1人1つのティーポットを飲みきるのは、マナーどころか常識らしいけれど。

「そりゃあ気の利くことで」

少しむっとして、彼女よりも先にホットケーキを頬張る。普通に美味しくて、小さな反抗心も消えてしまった。

「美味しいよ」

「よかったぁ」

安堵の表情を浮かべてはいるが、彼女は別に自信がなかった訳ではないと思われる。自信がない、ということがそもそも概念として存在しない人なのだ。

「食べ終わったら、片付けはあなたがお願いね」

「わかった」

ホットケーキをぺろりと平らげ、紅茶も十分に楽しんでから片付けを始める。

洗い物はすべてキッチンへ。そのキッチンは……まるで雪化粧をしたかのように白くなっていた。粉まみれのキッチン。小麦粉だろうか。いくらなんでも汚しすぎだろうと思ったが、朝ごはんの件も踏まえて何も言わないことにする。

ここのところキッチン自体まともに使っていなかったため、ほこりを払う意味もこめて入念に磨く。そういえば、いつからビストロを閉店にしたままだっただろう。時間を無為に過ごしていた、ここ数ヶ月。それを清算するかのように丹念に汚れをとる。思い出すのは、ここを舞台とした日々。自分が一番輝いていた時期。

 

「やっぱり、キッチンに向かっているあなたの方があなたらしいわ」

今度は何の含みもない、自然な笑顔を向けてくれる彼女。

「今日来たのもね、最近のあなたが塞ぎこんでいるように見えたからなの。それに、ずっと放っておかれたままのキッチンが寂しそうよ?」

つまるところ、僕がこうやってキッチンに向かい直し、心をこめて綺麗に磨くまでが彼女の狙いだったのだろう。まんまと乗ってしまったようだが、不思議と嫌な感じはしなかった。

「……はいはい、やればいいんだろやれば」

こみ上げる恥ずかしさからか、思わず顔を背ける僕。

「タヤーカは庭から店内まで大掃除! イラーナさんは食材の補充! 久しぶりにやるぞ!」

 

 

 

こうしてみんなから活力をもらった僕だが、久しぶりの開店初日は初めての寝坊で営業を副料理長に丸投げする事態に陥ったりした。さらに【マルシェ】計画も凍結。また秋にでもやろうと思う。

代わりに始めたのは、これまでの【ビストロ ガスパール】を本にする計画。丸2年を超えたウチの歴史、なかなか面白いと思うんだ。

 

もうすぐ春がやってくる。

出動!タヤーカ救護隊

 雪が降り積もる地。周りを見下ろすことのできる小高い丘に、その建物はあった。

(ここが……ビストロ ガスパール

 声を発するのも躊躇われるほど静かな、寂れた店。いや、店だった建物。使われていた形跡はとうに無く、周囲の綺麗な雪原が人の往来を否定していた。

 

 アストルティア有数のレストランとして名を馳せていた【ビストロ ガスパール】。グレン住宅街 雪原地区に建てられた店は、多くのスタッフとお客さんに支えられていたという。

 しかしある日、店主のガスパール氏が閉店を発表した。スタッフにもお客さんにも理由の説明はなく、全てが謎のまま氏は消えた。また、この店のコンシェルジュでありパートナーでもあったイラーナ氏も同時に行方をくらましており、恐らくは二人でどこかに行ったのだろうというのが世間の見解だった。

 それから20年が経ったつい先日、グランゼドーラ領の片隅でガスパール氏とイラーナ氏の死体が発見された。

 

 タヤーカは恐る恐る扉を開いて店に入った。木材を基調とした、質素ながら温かみのある店内……であったのだろう。今は埃が積もり、何もかもの時間が栄華の中で止まっていた。

 本棚、テーブルに置かれた手帳、散らかった書類、ひとつひとつ丁寧に目を通す。スタッフ間の連絡帳、顧客リストに帳簿、表紙に調理職人日誌と書かれたノート、すべての情報をかき集めた。

 

「彼が突然いなくなった理由は、僕にもわからない。自分で言うのもはばかられるけど……彼の右腕だった僕にさえ、何も相談しなかったんだ。それとも右腕っていうのは僕の思い上がりで、彼は、誰のこともなんとも思っていなかったのかもしれない」

 ここに来る前に会った、かつての従業員の言葉を思い出す。当時を知る人からしてもこの従業員はガスパール氏の相棒であり、何でも話し合える仲であったと言われていた。その従業員にさえ何も言わずに消えたガスパール氏。

「そういえば彼が消えるずいぶん前のことなんだけど、僕らの共通の友達から、店をガタラに移さないかって誘われていたことがあったな。雪山よりも住宅街のほうが人気が出そうだってみんな思ったんだけど、ガスパールは『僕を客寄せパンダにでもするつもりなんだろうよ』とか言って断ってたっけ。あの頃からだったかな。急にガスパールと他のスタッフとでもめ事が増えたんだよね。なんか他人が信じられない、みたいなこと言ってたな。まぁ、もともと友達の少ない男ではあったしなぁ」

 

 書棚の奥の方に仕舞いこまれていた手紙には『店舗移転のご提案』と書かれていた。要は、友人たちで近所に住むからガスパール氏の店もどうだろう、という内容だ。どうやら右腕さんの言っていたことは真実であるようだ。

 

 母は、このことを言っていたのだろうか。いつか言っていた「あの人に沢山の仲間がいたら、私たち家族はもっと幸せに生きられたのかな」という言葉。その言葉を疑問に思い、私はここまで調べてきた。

 仲間と聞いての予想でしかないが、移転の申し出を受けていればガスパール氏の周りには友達も多く、人の出入りのある土地で店の人気も上がっていたのかもしれない。

(全部、そうであってほしいという楽観的な願望でしかないんですけどね)

 それでも今から自分が成そうとしていることを考えれば、その願望に賭けるしか方法がなかった。

 

 目的、ガスパール氏とイラーナ氏の滅びの運命を変える。

 方法、店舗移転を実現させて、ガスパール氏に沢山の友人をつくる。そして【ビストロ ガスパール】を人気店にしてお客さんを集める。そしてガスパール氏と仲良しのお客さんを増やす。

 やることは決まっていた。辿るにふさわしい道もわかったはず。なに、道を違えたと気づいたなら、それから修正すればいい。

 

「私はわりと何でもできます。例えば徒手空拳の武術だったり、レストランの管理だったり、タイムリープだったり。大丈夫です、私は昔から優秀で、なにより運が良いので。この世界の私を捨ててでも、この願望を叶えてみせます」

 

 誰も知らない店内で、タヤーカは呟いた。時を移る、時間を売る呪文と共に。

 

「待っていてください、お父さん、お母さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「タヤーカ、とっとと賄い食べちゃいなさい。まだ店先の掃除終わってないだろ!」

「はいはいやりますよーっと」

 

「いらっしゃいませ!【ビストロ ガスパール】へようこそ!」

つきのものがたり

しんしんとゆきがふりつもるよぞら。

うみはつきのだいざをたたえる。

 

「フレブルーナ、ほんとうにうみをわたるの」

──わたしはうみをわたる

 

「フレブルーナ、きみをまもるものはむこうにいないかもしれないよ」

──それでもわたしはせかいをみたい

 

「フレブルーナ、ぼくじゃとめられないのかな」

──すすむときめたのはわたし

 

「フレブルーナ

──ランドリング

 

「フレブルーナ、さようなら」

 

 

ランドリングはつきのだいざにわをおいた。

せなかにひのひかりをうけてフレブルーナはこぎだす。

たいようにおいこされないようにすすむ。

 

ランドリングはこがれるほうをめざす。

 

調理職人日記 ~やくそう~

 調理職人を支える調理レシピは、ギルドで認可された食材とフライパンを使うことでしか作れない。レシピに則らない料理は、調理職人の料理として認められず、腕を認められることも名声を得ることもない。僕はこの現状に納得がいかないのだ。世界が信じるレシピを、僕が作る新しいレシピで覆してみせる――

 

 

 既存のレシピに手を加えて、さらに美味しい料理を作ることはできる。しかし、調理職人のスキルたる『身体へ影響を及ぼす料理』に昇華することができない、というのがこれまでのレシピ開発の結果である。あらゆる調理食材の組み合わせを試したように思うが、上手く効果が現れなかった。

 最近ではフードペアリングと称して、料理と共に水薬をドリンクとして味わう方法を試したが、これはレシピの改定とは言えないだろう。

 研究の次のステップとして、今度は食材ではない物を料理に組み込んでみることを思いついた。特に試したいのは、料理同様に身体に影響のある食べ物。まず思いついたのは、古来より傷を治すために食されている植物、やくそうだった。

 

 やくそうをまな板に乗せてみる。これどうするんだ。野菜っぽいけど、決して食感は良くないし、そもそも美味しいものでもない。薬効を得るために食すのであって、食事には向いていないのだ。

 薬効といえば、毒を消し去るどくけしそう、麻痺を取り去るまんげつそう、眠りから覚ますめざめの花も似たような植物である。呪文の発達により使われる機会は減っているが、呪文が苦手な者には未だに重宝されているとか。これらの植物――『薬草』を料理に使うとしたら、スパイス的な利用法が妥当だろうか。少なくとも、サラダにして食べたいようなものではない。

 やくそうとどくけしそうはそのまま、まんげつそうの葉、めざめの花の花弁をそれぞれ切りだし、すべて紐でくくってひとまとめにし、ブーケガルニを作る。本来のブーケガルニは数種類のハーブを束ねたもので、スープや煮込み料理のスパイスとして使われる。これは言うならば、冒険者風ブーケガルニだ。

 おおとろの切り身、しゃっきりレタス、びっくりトマトを具材に、ピリからペッパーと冒険者風ブーケガルニで味を整え、仕上げにデリシャスオイルを加えてコトコト煮込む。

 

「あら、今日はまた随分と珍妙なことをしているのですね」

 

 こちらを覗きこんできたのは、コンシェルジュのイラーナさん。僕とイラーナさんとタヤーカちゃん、みんなウェディ。

 

「おー、いつもの『答えは言わないけど失敗を予言するモード』ですか、イラーナさん」

「それはすごく語感が悪いから、他の言い方を考えたほうがいいと思います」

 

『答えは言わないけど失敗を予言するモード』自体は否定しないんだな。ということは今回も効能のある料理にはできていないのだろう。

 

「今回は悪くないと思うんだけどなぁ。やくそうを主体としたブーケガルニ、本当に効果でてない?」

「ええ、全然全く欠片も寸分も治療効果はありません。それどころか、本来のマジックスープとしての効能も失われています」

「そこまで酷いのか。本当、どうしてなんだろうね」

「あなたは一般的な料理の技術を持ち込んでいるにすぎません。調理職人の料理は、そう簡単なものではないのですよ」

 

 イラーナさんはずっとこの調子だ。自分は答えを知っているかのように振る舞うが、ちっとも解決策を教えてくれない。昔から――そう、剣術を教えてくれていた昔からこうだ。僕が気づくまで物事の本質は教えてくれない。おかげさまで修業時代はとても苦労した。彼女に言わせれば、その苦労こそが強くなる秘訣らしいが。

 

「ここのところは料理の勉強をしているようですが、それはまるで見当違い」

「じゃあ何を学ぶべきだと?」

「あなたが自分で至るべき答えなので教えません」

「はいはい、いつも通りね。わかりましたよ」

 

 悪くないアイデアだと思ったけど、冒険者風ブーケガルニ、どうやら失敗のようだ。おやすみなさい。

 

 

調理職人日記 ~やくそうを主体としたブーケガルニの作成~

調理職人日記 ~ガーディアンサラダ~

 調理職人を支える調理レシピは、ギルドで認可された食材とフライパンを使うことでしか作れない。レシピに則らない料理は、調理職人の料理として認められず、腕を認められることも名声を得ることもない。僕はこの現状に納得がいかないのだ。世界が信じるレシピを、僕が作る新しいレシピで覆してみせる――

 

 

 先日は料理と飲み物の相性を軸に考えを進めたわけだが、今日はもっと根本的な発想、既存のレシピに手を加えてみようと思う。エルフの飲み薬をそのままスープの水分にしてみようか。せいすいでもまほうの小びんでもいいけれど。とりあえず買い出しに行こう。

 店の外に出ると、箒を持って落ち葉を端に寄せているタヤーカちゃんがいた。この子は最近雇ったコンシェルジュのウェディの女性で、主に庭にいる。いい笑顔でお客様を迎える担当。

 

「買い出しに行くけど、何かいる?」

「おつかいなら私が行きましょうか」

「いや、新レシピのアイデア探しだから自分で行くよ。方向性が全く浮かばなくてさ」

「なるほどー。あ、じゃあですね、サラダ食べたいです」

「サラダか。うん、今日はサラダについて考える日にしよう」

 

 普段だったら朝でも昼でも賄いに肉料理を要求してくるタヤーカちゃん。ダイエット中なのか、とは聞かないでおいた。

 

 

 さて、調理職人にとってサラダといえば『ガーディアンサラダ』のことだが、これが実に不思議なレシピである。使うのは、魚の切り身、しゃっきりレタス、デリシャスオイル、のみ。サラダのくせにレタスしか野菜がない。切り身が目立っていて、なんだかカルパッチョみたいだ。しかし、レシピがサラダと銘打っている以上、これはれっきとしたサラダなのである。誰がなんと言おうとも。

 この違和感を解消してみよう。野菜が足りないのだ。料理に使う野菜といえば、しゃっきりレタス、まんまるポテト、ジャンボ玉ネギ、びっくりトマトだ。このへんをガーディアンサラダにありったけ加えてみるか?

 特に良いアイデアも浮かばず、バザーで野菜と雑貨品をいくつか購入して店に帰った。

 

 

 新レシピの研究とはいえタヤーカちゃんに食べさせるものだし、適当でいいか。ガーディアンサラダのレシピにいろんな野菜を加えて……

 

「おまたせ、タヤーカちゃん。『4種野菜のガーディアンサラダ』です」

「ほほーう、見た目の華やかさはいつものガーディアンサラダを優に越えていますね。いただきます」

 

「いいですねこれ! 野菜の種類が豊富な分、色々な味と食感が楽しめて、美味しいしボリューム的にも満足です……が、それだけですね」

「やっぱりそうか……」

 

 ギルド発行のレシピとそれ以外の料理との違いは、食後に身体に及ぼす一時的な効能の有無である。バトルステーキを食べれば筋力が増し、スタースイーツを食べれば魅力が増す。レシピに手を加えて、より美味しい料理を作ること自体はさほど難しくないのだが、調理職人の料理として成功と言えるのは、身体への影響を与えられてこそなのだ。その点において、僕はまだレシピの改訂に成功したことがない。

 

「すごく美味しいですが、体感としては普段のガーディアンサラダほどの効能は感じませんね。頑強さを求めるなら、いつも通りのレシピのほうが圧倒的に効果があります」

 

 レシピに手を加えると効能が弱まるのは当たり前、下手をすれば効能がなくなることもある。理由はわからない。

 タヤーカちゃんがこんなに料理のことを理解している理由も、よくわからない。

 

「ま、私としては別に効能を求めているわけじゃないですし、とっても満足なんですけどね。今日もごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

 

 世界が信じるレシピを覆すような料理の研究は、依然として難航していた。

 

 

 

 調理職人日記 ~4種野菜のガーディアンサラダ(失敗)~